花占い
「好き」
「嫌い」
「好き」
「嫌い」
ゴーイングメリー号はその日港に停泊していた。
ルフィーは探検へ。
ナミは買い物へ。
いつも買出しの荷物持ちをするゾロは用事があると言って町へ。
船番だったウソップは、サンジが帰って来たと同時に町へ出て行った。
島が春島のせいか、魚も野菜も新鮮だ。
どこの店でも新鮮なものを売っている町。
こんな町に買出しに行って帰ってきたサンジの顔はいつもならにこにこうきうきとしているはずが、今日は様子が違う。
眉間にしわ。
そして手には、花。
そしてその花に向かって、先ほどから「好き」「嫌い」とつぶやき続けている。
あやしい・・・。
このサンジのあやしい行動には理由がある。
一生気持ちを伝えられないだろうと思ってあきらめていた相手。
その相手とはゾロなのだが。
三週間前、お互いに好きだと言い合って恋人同士になった。
恋人になっただけでうれしい。
もちろんキスもしてくれる。
でも・・・それ以上がない・・・。
確かにいざしようと言われると怖いかもしれない。
でも、恋人の望むことはしたいと思う。
それにゾロと一つになりたい。
でもゾロは一度もしたいと言ってこない。
もしかすると、俺は嫌われてるのかもしれない。
そうサンジは思い始めた。
だからと言って、直接本人に聞く勇気はない。
色々考えている時に、町で花屋を見つけた。
どんなときでもレディーへの気配りを欠かさないサンジは町に寄るたびにキッチンに置く花を買っている。
店に入ってどの花にしようか眺めている時、ある占いを思い出したのである。
善は急げ。
花屋の店員に
「花びらの多い花をくれ。」
と言って買って来たのが、今手に持っている花:ガーベラ。
今サンジがキッチンの椅子に座りながらやっているのは、花占い。
この花占いで、ゾロの気持ちを占おうと考えた。
花びらを順番に好き嫌いと言いながら押えていく。
しかし、さっきから最後の花びらが「嫌い」となってしまう。
段々泣きたくなってくる。
「もう一回やってみよ。」
「何をもう一回するの?」
「ぴっ!?」
後ろを振り向くと店の袋をいくつか下げたナミが立っていた。
「んナミすわぁ〜んvvvごめんね、気づかなくてvvvおかえり、マドモアゼルvvv」
目をハートにしてナミを歓迎。
「はいはい、ただいま。で、なにしてたの?」
適当にあしらわれて何をしていたのかと聞かれる。
が、恥ずかしくてサンジには答えられない。
乙女のように花占いをしていたなど。
「い、いやー・・・。何って言われても・・・。」
花を持ちながらモジモジしているサンジ。
ナミは時々このサンジという男は自分よりも乙女なのではないかと思うときがある。
「ふーん。まーいいけど。あんまり悩んじゃだめよ。時には体当たりしなきゃ。」
「体当たり・・・。」
「そうよ。時には体当たりも大切なんだから。悩んでるだけじゃダメ。いい?」
「ありがとう、ナミさん。お礼に紅茶でも淹れるね。」
紅茶を淹れながらサンジは“体当たり”の計画を立て始めたのである。
夕方、サンジは晩御飯を作りながらゾロの帰りを今か今かと待っていた。
どうしても聞きたいことがある。
どうしてキス以上の事をしてくれないのか。
俺のことが嫌いなのか。
ちゃんと聞きたい。
サンジが考えている間にも、キッチンにはいい匂いが漂いはじめた。
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