想い
この想い、俺のお前に対する想いは知られてはならない。
きっとこの想いを知られたら、
お前はいつもの眉間の皺をもっと深くして嫌そうな顔をするだろう。
それとも、無言でその場を立ち去るだろうか。
それとも、俺を罵るだろうか。
でも、これだけはわかる。
この想いを知られたとき、俺たちは仲間でなくなる。
戦う時の預けられた背中がうれしい。
その背中を預けてもらえる幸福を守るため、
俺はこの想いを隠し続けよう。
*****
夜のキッチンにサンジが一人。
目の前には、一枚の紙切れ。
その紙切れとは、ロロノア・ゾロの手配書。
町で手配書を見つけた時、持ち帰らねばと壁からはがして胸ポケットにしまった。
その時からこの手配書はサンジの宝物になった。
毎晩この手配書を眺めることがサンジの日課になった。
「好きだぞ、ゾロ。・・・でもこんなことは、言っちゃいけないんだよな。」
毎日毎日手配書を眺めては話しかけ。
「やっぱ・・・」
むなしさに押しつぶされそうな日もあるけれど。
「これでいいんだよな・・・。」
その時、不意にドアが開いた。
「なんだ。まだ起きてんのか。」
「な!?な、なんだまりもか。ど、どした?」
突然の手配書に載っている本人の登場に、慌てて手配書を胸ポケットに突っ込む。
「水か?一度寝たらメシ時にもなかなか起きないお前が、こんな夜中に起きてくるなんて珍しい。それともあれか?怖い夢でも見たか?」
これが俺なりのコミュニケーション。
コミュニケーションだと思ってるのは俺だけだけど。
言われた本人嫌そうだし。
それに反応ないし。
「酒。」
反応あった・・・けど一言で終了。
「はいはい、酒ね。ほれ、どーぞ。それ飲んでさっさと寝やがれ。」
半ば投げやりになってゾロにワインを渡す。
もっと反応しやがれってんだ。
心の中でため息ひとつ。
もう一度椅子に座ろうと椅子に手をかけたとき、なぜか前の席にゾロが座った。
「何座ってんだ?」
いつもは酒を受け取るとすぐに出て行くゾロが、今日は出て行かない。
「お前も飲め。」
・・・・・
「へ?」
何かがおかしい。
いつものゾロならこんなことは言わない。
でも
うれしい・・・。
気まぐれでも、ゾロと一緒にいられることが
うれしい・・・。
「しょ、しょーがねーなー。」
口元が緩みそうになるのを引き締めながら、ゾロの前に座る。
「あ、ちょっと待て。グラスで飲も。」
「あ?このままでいいだろ。」
そう言うとゾロは、瓶に口をつけて飲みだした。
「あ!待てってば!もー。」
グラスを持って席に座る。
すると、自然なしぐさでワインを注がれる。
絶対ゾロ今日変だー!!
ビックリしすぎて、口から心臓が出るかと思った。
「あ、ありがと。」
「おう。」
注いでもらったワインを飲む。
というか、飲まずにはいられない。
ヒー!ドキドキするー!
それからサンジは、ハイペースでワインを飲みだした。
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