想い
この想い、俺のお前に対する想いは知られてはならない。
きっとこの想いを知られたら、
お前は俺のことを罵るだろう。
それとも、無言で立ち去るだろうか。
でも、これだけはわかる。
この想いを知られた時、俺たちは仲間でなくなる。
戦う時に預けあった背中がうれしい。
その背中を預けあう幸福を守るため
俺はこの想いを隠し続けようと思っていた。
あの時までは。
*****
夜の男部屋。
ゾロは珍しいことに、ふと目を覚ました。
周りのハンモックを見渡すと、コックのハンモックは空のままだ。
「水でも飲みに行くか。」
外に出るとまだ真夜中で、海は黒い。
そんな中、まだ電気の点いているキッチンへ向かう。
こんな時間に本当に起きているのかとキッチンの窓を覗けば、椅子に座って何かを見ているコックの姿が見えた。
ドアノブを回して少しドアが開きかけたとき、コックは持っている紙を自分の前にかかげた。
当然何を見ているのかゾロには見えるわけで・・・。
なぜかそこには自分の写真・・・。
たぶん手配書・・・。
“なんであいつが俺の手配書なんか持ってんだ!?”
混乱しているゾロにさらに追い討ち。
「好きだぞ、ゾロ。・・・でもこんなことは、言っちゃいけないんだよな。」
「!?!?!?」
さらに混乱。
"そんな素振り、今まで見せなかったじゃねーか!!”
「やっぱ・・・」
“?”
「これでいいんだよな・・・。」
そう言ったコックの顔があまりにも寂しげで・・・。
胸が押しつぶされそうになる。
本当は一生言わないと考えていたこの想い。
それがあんな顔をさせてしまっているなら
言ってしまおう。
偶然知ったサンジの気持ち。
気持ちを知った今、俺の想いを隠す必要はない。
少しだけ開いていたドアを勢いよく開ける。
“偶然を装ったほうがいいな。”
「なんだ。まだ起きてんのか。」
サンジの肩が跳ね上がる。
「な!?な、なんだまりもか。ど、どした?」
面白い位動揺してやがる。
しかも、手配書胸ポケットに入れんの見えてっし。
「水か?一度寝たらメシ時にもなかなか起きないお前が、こんな夜中に起きてくるなんて珍しい。それともあれか?怖い夢でも見たか?」
またこいつは俺の腹立つようなことを言いやがる。
が、ここは我慢だ。
我慢、我慢。
酒でも飲ましゃー、おとなしくなるか・・・。
「酒。」
「はいはい、酒ね。ほれ、どーぞ。それ飲んでさっさと寝やがれ。」
渡された酒を受け取ってサンジが座っていた向かい側の席に座る。
「なに座ってんだ?」
俺が酒を持って座ったのが不思議だったのか、サンジが聞いてきた。
「お前も飲め。」
・・・・・
「へ?」
間抜けな返事が返ってきた。
目が挙動不審だ。
まゆげと同じぐらいグルグルしてやがる。
次は口元が緩んでやがる。
見ててあきねー奴だ。
「しょ、しょーがねーなー。」
そう言いながらコックは俺の前の席に座った。
「あ、ちょっと待て。グラスで飲も。」
「あ?このままでいいだろ。」
俺は酒をグラスなんかにいちいち入れるのは面倒だ。
「あ!待てってば!もー。」
サンジがグラスを持って席についた。
その持ってきたグラスに酒をついでやる。
「あ、ありがと。」
「おう。」
それからサンジは、ハイペースでワインを飲みだした。
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