「お前大丈夫か?」
「だーいじょーぶー」
俺がこんな心配をするのには理由がある。
目の前にいるコックが明らかに酔っ払っているからだ。
そのくせ、もうやめとけと言うとまだ飲むと言って駄々をこねやがる。
顔真っ赤にして、目は焦点があっていない。
「もうそろそろやめとけ。」
そう言って瓶を奪い取ると
「えー。まだのむぞー。」
またこれだ。
無視だ、無視。
そしたらあきらめたのか、むーとかなんとか言って机にうつ伏せになった。
それからというもの、俺の頭の中は今から切り出そうとしている言葉のことでパンクしそうだ。
“そろそろ言わねーとな。”
「さっき・・・」
「んー?」
いざ言うとなると緊張する。
「さっき・・・なんで俺の手配書持ってたんだ?」
「今・・・なんて・・・」
心なしかサンジの声が震えているような・・・
「俺の手配書・・・持ってただろ?」
サンジが顔を上げた。
見開かれた目が俺を見た。
もとから白いサンジの顔が段々と青ざめてくる。
「え・・・えっと・・・あの」
今までオロオロしていた目が、何かを決心したように俺を見る。
「俺・・・ゾロのこと・・・好きなんだ・・・。」
そう言ったサンジの目には涙がたまって、ついには机に落ちた。
涙の止まらないサンジを抱きしめようと手を伸ばした時
「でも、迷惑かけねーから。」
サンジがよたつく足で立ち上がった。
そのままドアの方に向かっていく。
「じゃな。」
「ちょ、待て。どこ行く気だ。」
どこ行くんだ。俺はまだ、気持ち伝えてねーぞ!?”
急いでサンジの腕に手を伸ばす。
「離せよ・・・。」
「どこ行く気だ。」
「迷惑かけないって言っただろ!!」
「俺と同じ気持ちのどこが迷惑なんだ?」
サンジの動きが止まる。
「サンジ・・・こっち向け。」
出来るだけ静かに呼んだつもりが、サンジの肩が飛び上がる。
“チッ・・・慣れてねーんだよ。”
「サンジ。」
サンジがゆっくり俺の方を振り返る。
こぼれる程の涙をためたサンジの目。
噛みしめた唇。
酒が入っているせいか、赤く染まった顔。
すべてが愛おしいと思うことが・・・ある。
すべてが愛おしいと思ってしまう人間が・・・
俺の目の前にいる。
「サンジ・・・すげーうれしかった。」
「え?」
「お前が俺と同じ気持ちで。」
そう伝えるだけで愛しさが増す。
それを少しでも伝えるために、サンジを抱きしめる。
「サンジ、好きだ。」
そう言うだけで心の中が暖かくなる。
「ゾロー・・・。」
「サンジ、もう一度聞かせてくれ。」
「え?」
「そう言えば、手配書にも言ってただろ。」
その言葉にサンジの顔がみるみる真っ赤になる。
「聞いてたのか!?」
「たまたまな。それより、もう一度聞かせてくれ。」
ますますサンジの顔が赤くなる。
「す・・・す・・・」
目がグルグルしてやがる。
「す?ほら、サンジ。」
「スキ・・・好きだぞ、ゾロ。」
サンジはそのままモジモジとうつむいてしまう。
照れてやがる・・・。
そんなところも愛しく思ってしまう。
その照れた顔を見ようと、サンジの顔を上に向かせる。
そして大切な言葉を。
「俺も好きだ、サンジ。」
そして、俺たちは初めてのキスをした。
えんど。